久世さんの作品の中では一番好きです。
どれも独特の雰囲気がありますが、中でもこれはイイです。
懐古趣味的で、乱歩の世界の濃密なエロティシズムと差し色のようなグロテスク。
美青年に気を引かれる中年男、という部分は少し「ベニスに死す」を彷彿とさせ、
またあるときは美女に目移りし、ホテルの隣の部屋に怪奇的妄想を抱いたりする、
スランプで情緒不安定になっている乱歩の、外人向けホテルに逃避中の数日間(?)を描いています。
また、そんな生活から生み出される妄想を昇華したような小説が、
作中作で全部読めるんですが、これは乱歩っぽいといえば乱歩っぽいんですが、
何かもっとこう・・・熟れた桃の中にどっぷり入ってめくるめく陶酔に酔っ払ったような感じです。
アクがあってくせになるタイプの本です。私はめったに読み返しはしないのですが、
これはときどき読み返してしまいます。雰囲気にひたりたい時に。