ヴラト信仰の隆盛な惑星デンモルク2でローダンに降り掛かった厳しい試練と遂に再会を果たした両巨頭に生じる予想外の亀裂を描く大長編SFスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第376巻。本巻の執筆者は成長著しい若手フランシスの独壇場です。苦難の末ローダンがようやく故郷銀河に帰還した事で、いよいよラール人を軸とする公会議種族の残党との戦いの火蓋が切って落とされます。太陽の使者ヴラト信仰の興隆に戦友アトランとの再会とプラス材料が多く最初は楽観的に思えましたが、実際は真逆で120年の隔たりが生んだ過酷な実情が見えてきます。
『ヴラト降臨』H.G.フランシス著:ローダンはポスビ研究者ガルトからヴラト信仰の隆盛な惑星デンモルク2にヴラトとして降臨する作戦を提案され最初拒否するが周囲の説得により応じる。本編ではガルトが女とキスするとポスビが彼の唇を改造しようと追い掛け回す破茶滅茶なドタバタ騒ぎや惑星デンモルク2を支配するヴラト神官の醜い権力争いにローダン一行を待ち受ける危険な罠、新アインシュタイン帝国のティフラーの輸送艦が迎える絶体絶命の危機と文句なしの充実度です。『対立』H.G.フランシス著:ローダンは新アインシュタイン帝国の本拠惑星ガイアでアトランと再会するが、現政府がラール人と結んだスタトゥス・クオ(現状維持)政策は人類の降伏に等しいと激しく反発する。本編では惑星ガイアの過激派学生グループによるローダン誘拐事件、ローダンの帰還を察知したラール人ホトレノル=タアクとアトランの危険な秘密会談と密度の濃いサスペンスが存分に味わえます。
本巻の翻訳者、嶋田洋一氏のあとがきは日本SF界に尽力された偉大なお二方の訃報と生前の思い出を綴られています。アトランは完全に手詰まり状態だと思いますが、ローダンの方も自信過剰で大丈夫だろうかと心配で、両巨頭が歩み寄って考えを改め再び結束する事を切実に願います。