一部では有名な謎の書、ヴォイニッチ写本について、寡聞にして全く知らなかった。誰も読めない奇妙な文字でびっしりと書かれ、多数の不可思議な挿画に彩られた二百ページ以上の写本。忽然として二十世紀初頭に古書肆ヴォイニッチに見出され、ロジャー・ベーコンやルドルフ2世、アタナシウス・キルヒャー、ジョン・ディーなど錚々たる名前がその関係者として囁かれる。現在に至るまで、その文字は解かれることなく、真作偽作の毀誉褒貶の渦中にある。この本は、その写本とそれを巡るさまざまな事件を、わかり易く絵解きしてくれる。そのため、暗号学、中世本草学、アウトサイダーアート等の初歩的な解説を入れ、これ一冊で当該写本についてはおおかた理解できるようにしてくれている。言及するフォリオに比べてやや図版が少なく、殆どがモノクロであるという不満が残るが、Yale大学が画像を全てUpしてくれているので其方を参考にすれば良いだろう。ただ、この面白い本にして、語り口が俗に流れすぎである。「・・だし」の多用、「萎え萎え」などの使用はこちらこそ読む気が萎えてしまうというものだ。とはいえ、こんな面白いものを極めて面白く紹介してくれたことに感謝、星5つ。