──あらすじ、主題、戦闘などについて──
主人公はゼンという純朴な若武者で、過ぎたことを理屈っぽく考えるのが癖な田舎者です。
あることが起こったために彼が山から下りて旅に出、育て親兼師匠カシュウゆかりの地をぶらつく、
あらすじを簡単に説明するとこの通りです。
物語はゼンの一人称で進みます。
その過程での主人公の思考を読んでいると般若心経を読んでいる気分になります。
おそらくですが語られる思想が仏教の「空」だからでしょう。
したがってかなり回りくどい。ぐだぐだと登場人物と禅問答を続けざるをえない。
それを主人公が剣の道の中で考えているから実践として、
直截的に幾つかの戦闘シーンでその過程、思考を示してくれるんですが、
スカイ・クロラのあのドッグ・ファイトと同じく詩のように書かれているので分かる、というより感じることができるだけ。
主に肉体の描写なので戦闘機の挙動と違い、
輪郭ははっきりしているんですが中核にあるものが「空」なので、
分かるのはさらに難しくなっているかと思われます。
それでも感じることができるのは著者の面目躍如といったところで、
戦闘シーンもかなり躍動感があり、主人公が未熟なのもあって緊張感があります。
──総評──
エンタメに適さない思想を読み手に直接ぶっつける、かなり挑戦的な作品のように思いました。
下手をすれば説教臭く、退屈にしか感じられないお坊さんの説教をエンタメ化しているわけですから。
それほど目新しい試みではありませんが、質が高いものは貴重です。
それに軽過ぎない軽さを備えた小説ですので、ゆっくり読んでも4,5時間もあれば読めます。
もしかすると抹香臭さに辟易して途中で読むのを止めてしまう人がいるかもしれませんが。
まだ始まったばかりですので、今後に期待と言うことで★5です。