名取裕子さん主演の『法医学教室の事件ファイル』と同じ「法医学」という科学をベースにしたストーリーでありながら、仕上がりは全く違う。『法医学教室・・・』が完全にデータの蓄積で事件の真相に迫って行くのに対して、この作品は得られた断片的なデータから主人公大己(瑛太さん)の推理力で亡くなった人の「死の真相」や「最後の声」を読み解いて行くという、何か探偵物のようなストーリー展開。しかも、大己の読みとった声は視聴者にはほとんど推測できないまま、彼の口から語られるという形式をとっている。それは、まさに「事実は真実を語っているとは限らない」ということを実感させられるものだ。ストーリー展開もよく、キャストの方々のプライベートな人間関係も良好であるらしいことを窺わせる和やかな、もしくは、熱い部分とシリアスな部分との対比も素晴らしい。
いくつかの話は観ていて本当に涙が出た。亮介(生田さん)の親友フジオ(田中さん)がプライドを守るために自ら命を絶つ話、清掃会社の社長が家族のために生命保険金を得るために自殺する話、フリーカメラマンがエコノミー症候群で亡くなる話、靴屋(石橋さん)の奥さんが末期癌のため、自分の死後、夫が一人で生活できるように少しずつ「その時」のために備えて行く話、癌になった小説家(田村さん)が尊厳死を選ぶ話などは、泣けました。表面だけ見るだけでは決してわからない、それぞれの亡くなった人の死の真相、亡くなった人の思いを大己の口から聞かされると、こんな荒んだ世の中でも「一人ひとりは皆優しい」と認識を改めさせられる思いだった。科学をモチーフにしながらも、これだけ人間くさい、洒落て言えばヒューマニスティックな仕上がりになっているのは非常に興味深い。
他の方が、この作品を「軽い」を評されていますが、私はそうは思いません。人が生きることの意味、死ぬことの意味を考えさせる優れた作品だったと思います。