筆者は女装騎士デオンに並々ならぬ興味をもって筆を進めたようですが、
デオンが外交に長けた、という側面は全く感じられず、デオンも人間と
しての魅力がまるでない主人公です。
内容は、ルイ15世の時代(デオンは16世、ナポレオンの時代も生きて
80歳を超える長寿を全うするが、半生をイギリスに過ごす)のデオン
を巡る宮廷ゴシップ的な記述が80%を占め、最後はかなり困窮した
老後を送り、それが妥当かと思われるデオンという女装もした騎士の
物語です。
又、どこまでが筆者の研究成果による史実か、空想かはっきりしま
せん(曖昧な書き方をしている)。筆者の空想と思われるデオンの
独白や内面吐露もとても外交の長けた人物とは思えず、それが筆者の
デオン観なのか、作家として書き切れなかったのか判断に苦しむと
ころです。遺された史料を使いきれなかったために読者を迷わす
著作ではあると思います。
後書きに「このような人物が本当に存在したのか不思議」といった
記述がありますが、そうした筆者の個人的な驚きに終始していると
もいえます。
いずれにせよ歴史上の小さな小さな脇役だと思います。
もう少し文章がこなれているといいのですが。