本書はオムニバスである。冒頭に載っている、本の題名にもなっている「ヴェニスの商品の資本論」は実に面白い。社会科学系の本を読んで、心の底から面白い!と思ったのは、私はこれが初めてである。シェイクスピア『ベニスの商人』を読み解きながら、貨幣、利子、ヨーロッパ社会におけるユダヤ人の役割を縦横に語っている。経済学の素人に貨幣のもつ興味深い役割を教え、西洋史の素人にヨーロッパ社会におけるユダヤ人の役割を教えてくれる本である。もちろん、文学的分析という尺度においても一級品である。一言で言えば、様々な読み方を許容する本である。私自身は、なぜアラブ社会においてユダヤ人が嫌われるのか、その謎を解くヒントも本書に隠されていると思った。それにしても、分析の道具がマルクス!!とは。マルクスを援用してこのような立派な分析が出来るのなら、だれも見向きもしなくなったけれども、やはりマルクスの著作は読んでおかなければいけないという気にもなってくる。