1951年に結成され、翌52年のヴェネチア音楽祭でデビューした「イ・ムジチ」(音学家たちの意味)。
結成目的は、それまで主流となっていたバロック音楽演奏が過度に情緒的だったため、
彼らは自分たちが考える現代的なバロック演奏の形式、
つまり本来楽曲が持っている魅力をそのまま再現する演奏を確立するために仲間を集め、旗揚げした。
当時、メンバー12人の平均年齢は20歳。初代コンサートマスターを勤めたアーヨは弱冠18歳だった。
この盤のコンサートマスターは、4代目のPina Carmirelli。初の女性CMだ。
彼女が中心となった「四季」は、イ・ムジチ音楽の変化を感じさせる。
なにより全体の楽器の分離が鮮明で素晴らしい。特にチェンバロと、通奏低音部。
アバド盤や、ホグウッド盤だと、チェンバロは彼方に引っ込んでしまい、時折存在を感じさせる程度だが、
PINA盤では、しっかりと全体で存在感を示し、低音部も、きっちり聴き取れる。
さらに楽器だけにマイクが向けられているのではなく、演奏されている場の雰囲気が伝わってくるような
アンビエントな録音になっているので、ヘッドホンなどで聴いていると、
まるで良質のホールの最前列にいるような気持ちになる。
通常のような、板のような薄いヴァイオリンの音ではなく、
木の胴の部分が共鳴していることが分ってくるような、厚みのある弦の音になっている。
演奏はどの楽章も素晴らしいが、「冬」の第一楽章を聴いた時に、驚いた。
ここは「冷たい雪の中で凍えて震える」と楽譜に情景が描き込まれているが、
PINAイ・ムジチは、空が陰り、暗く重い雲で埋めつくされ、小雨まじりの雪が降り出す様を、
冒頭部分でそのままに表現する。
徐々に近づく寒さと暗さに包まれる空。微音で始まり、クレッシェンドしていく音楽。
雪のちらつく様はチェンバロで、北風のヴァイオリン(左チャンネルのPINA)と、
舞い散る雪(右チャンネルのチェンバロ)のかけあい。
最後はコートの襟を立てるしかない厳しい北風が吹きすさぶ。
2代目CMのミケルッチ盤は、全体の演奏の一体感と、
彼の音楽(ヴィヴァルディ)への思いが伝わってくるような感動の名盤だが、
その伝統を受け継ぎながら、PINA盤では、彼女のソリストとしての力量を立たせた「四季」が楽しめる。