ジャズ・ボーカルもライブ・アルバムが好きだ。クリス・コナーの「At the Village Gate」(1963)はジャズ・クラブでのライブ盤の中では、サラ・ボーンの「At Mr. Kelley’s」と並んで最も好きな一枚。録音が臨場感に溢れ、リラックスしてまるで客の一人になった気分になれるかどうかが、私にとってはクラブ・ライブ盤の良否であり醍醐味だ。歌詞を忘れたり、楽器をぶつけたり、マイクコードに足を引っ掛けたりというライブならではのハプニングが時々起こり、アドリブでそれを笑って切り抜けたりする楽しさを、こちらもその場にいるかのように見える(味わえる)のもライブ録音ならではだ。このアルバムでもクリスが歌詞を忘れる場面が ”Black Coffee” で出てくる。
クリス・コナーは50年代半ばから名盤と言われるアルバムを数多く作ってきたが、NY Village Gateでのこのライブ当時は36歳でまさに脂ののったイイ女(?)だった(と思う…)。もともとハスキーないい声だが、どちらかと言えばアッサリした歌唱で色っぽいタイプではない(と思う…)。しかし情感は豊かで、白人女性ボーカルでは最もジャズ的な表現力のある歌手だと思う。
このアルバムは前後半でEarly ShowとLate Showの2部構成になっており、ミディアムからアップテンポの前半、スロー・バラード中心の後半に分かれているが、クリスはいずれも余裕たっぷりにこなしている。ロニー・ボール(p)、マンデル・ロウ(g)などスィンギーな伴奏陣もこのライブのもう一つの見どころ(聴きどころ)だ。リラックスしてこの時代のジャズ・クラブの雰囲気を楽しめるいいアルバムです。