本書はソ連の心理学者、教育学者ヴィゴツキーについて、その理論の全体像を分かりやすく紹介した本です。
「心理学におけるモーツァルト」という形容を著者は何度も紹介します。従来、フロイトの精神分析学やパブロフなどの反射学、ドイツのゲシュタルト心理学など、様々な潮流に分裂していた心理学をそれぞれ批判し、真に唯物論的な心理学を打ちたてたのがヴィゴツキーでした。その特徴は歴史的方法の導入、言語による社会性の内面化、教育による科学的概念(高次精神機能)の形成、危機による(質的な)発達段階論、などです。
また、本書はヴィゴツキーの生涯や、彼の没後、理論の受け入れ過程についても紹介しています。37歳の若さでなくなり、学究機関は17年間。その間に、法学、哲学、芸術学の研究を修め、その上で20代後半から心理学の分野で鮮烈なデビューを果たしたことなど、とても刺激的なエピソードに興味をそそられます。また、日本では心理学よりも教育学の分野で受けれられたこと、アメリカでは共同学習の部分だけ偏って導入されたことなど、彼の理論の影響とその評価も知ることができます。
200ページほどの短い新書本ですが、ヴィゴツキー理論のダイナミックな面白さと、なにより子供に対する暖かい思いが伝わってくる良書です。教育や人間の発達に関わるすべての人に読んでもらいたい本です。