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中心的な題材はユーゴ空爆で、様々な人物へのインタビュー、現地での取材、対論などでその実像を克明に描くのはジャーナリスト・イグナティエフならではの技である。
しかしながら、本書はそこでは終わらない。ジャーナリスティックな文章の中で、ユーゴ空爆が近代市民たる我々に投げかける根本的な問いを織り込んでいく。すなわち、究極的には自らの命を投げ出して国家を守ることを前提に成立していた近代市民社会は、ユーゴ空爆に始まった「仮想の戦争」(戦争がテレビ報道され、一般市民は危害の及ばない所から映画を観ているような感覚の戦争)の時代において如何に成立しうるか。
ユーゴ空爆に関する文献は多々あれど、このような近代市民社会の成立原理を揺るがすような事件であったことを教えてくれる本を、私は他に知らない。
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