永遠の時間を生きる伝説のミュータント戦士エラートの故郷銀河への帰還と計算能力を喪失したケロスカーが招く八十年計画の危機を描く大長編SFスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第407巻。本巻の執筆者は通好みの重鎮ダールトンと実力派ヴルチェクです。本巻はオールド・ファンが泣いて喜びそうな伝説の戦士エラートの登場とあって当然の如く華々しい展開を予想していましたが、蓋を開けて見たら意外にも慌しく苦戦を強いられる地味目の物語になりました。また本筋とは別に気づいた事ですが、後半で顔を揃えるテラ陣営の3人、ヴァルメル、ヴァンネ、ヴァリオの名前、ついでに次巻の題名「ヴァルベ星間帝国」が「ヴァ」で始まる名詞ばかりなのは絶対に偶然ではなく、きっと作家チームが言葉遊びに凝ったからに違いないなと確信した次第で思わずニヤリとさせられました。
『エラート還る』クラーク・ダールトン著:故郷銀河を探して大宇宙を彷徨っていた精神存在エラートはラール人の中性子化作戦の場に引き寄せられ危機に陥るが辛くも逃れ ‘それ’と邂逅を果たす。本編ではエラートが‘それ’によって不慣れな肉体に天才少年の意識と共に押し込められ意に反してラール人と超重族の存在に怯える植民惑星に実体化されて相当に苦労しますが、これも全て‘それ’が惑星住人を勇気づけ結束を高める為に取った演出だと考えれば納得が行き、やはり全能の超越知性体は流石だなと感心させられました。『ヴァリオと番人』エルンスト・ヴルチェク著: ラール人の中性子化作戦を監視していたテラ陣営はやがて近傍惑星ホウクセルにいるケロスカーの危機に思い至りヴァリオ=500を救援に派遣するが、そこには過去からの惑星の番人ロンリーが待ち構えていた。本編では衛星物体に化けてラール人を欺き基地に潜入したロボット・ヴァリオ=500が地下迷宮で強敵ルルンゴ=モクランの番人と知力を尽くして戦う活躍が天晴れです。唯やはり全盛期の惑星オリンプでの皇帝アーガイリスの印象が強く何時かまた復活して欲しいと思います。
本巻の翻訳者、渡辺広佐氏のあとがきは氏が『子規365日』を7月に読んで面白く感じた3つの句を紹介し、終わりに自作の句も披露されています。ケロスカーの不調によって八十年計画の運命も今や風前の灯に感じられるまさに絶体絶命の危機をコンセプトは救う事が出来るのか?‘それ’が人類の反撃の為に自信を持って送り出したコンセプトの真価が問われる次巻での活躍に期待しましょう。