私の性の目覚めとは全く違い、読んでいて鴎外の余りの淡泊さに、ステーキを食べたいのにお茶漬けを食べるような心境で読み込みました。 鴎外は一体、中学生くらいの頃の、あの狂おしい、誰もが経験し、成年して振り返れば懐かしく思う思春の衝動を真に体験したことがあるのかしらん?とさえ思って読みました。 でも、不満は無いのです。人類の歴史上、性というものを、かくまで理知的に屈服させたかたちで作品化してしまった文学者は他にいないのでは無いでしょうか。此処には超人的な「観察者」がいます。プラス怜悧で明晰な文体とあいまって鴎外にしか書けない、成功作・失敗作なんていうことを超えた作品と思います。性の問題を正面に据えた芸術の中でも、その超アポロ的な性格の故に世界文学上の一記念碑といえるでしょう。 極限の性文学です。これに不満な方は、マルキ・ド・サドの「悪徳の栄え」か三島由紀夫の「憂国」を読みましょう。