この作品の内容については解説の田中ロミオ氏が非常に的確でかつ読み物として
面白く書いているので、できるならば店頭で巻末の解説を読んでみて欲しい。
と、これだけではレビューにならないので、自分なりの感想も書いてみる。
「荒川工」と言えば連続した会話文による軽妙な掛け合いが持ち味で、過去手がけた
ゲームのシナリオでも展開が『シリアス3:コメディ7』ぐらいの比率となっていた。
しかしこの作品ではその比率が逆になっている。
さらに軽い叙述トリックを用いた推理小説的な展開にもなっており、今までの荒川作品を
期待して購入するとかなり戸惑うのではないかと思う。
ラストの展開も、まさかそう来るかとの単純なハッピーエンドではない終わり方。
他にも苛めにまでは行かないまでもそれに近い描写もあり、読んでいて「痛い」と
思わせられる部分はあるものの、昨今のライトノベルでほぼ標準装備されている「萌え」
「微エロ」要素は皆無に近い。
以上、なかなか万人には勧めにくい作品ではあるが、小説としての吸引力は強く、
一旦読み始めたら先が気になって最後まで読ませてしまうパワーを持っているので、
機会があれば手に取ってもらえたらな、と思う。