ものすごい演出である。
古代の英雄のコスチュームでグンターの館に乗り込んだジークフリートは、そこの住人たちと同じネクタイ姿に着替えさせられ、以降、それで通す。からめとられたその姿が哀れである。
視覚的に先鋭な対照は、古代の戦士のいでたちのワルトラウテの説得を、百姓のおかみさんのようなブリュンヒルデが拒絶する場面でも効果を上げる。
現代の服装を取り入れた演出だが、最近横行する、音楽さえ作曲家の遺したスコアに則っていれば舞台上で何をやろうが勝手、と言わんばかりにテクストを音楽の添え物扱いした安易な読み替えではない。
意匠こそ現代風だが、演出家コンヴィチュニーはむしろ、テクストの本来の意味に迫ろうとする。
意表をつく終幕が圧巻で、観客を安全圏に置かない。細かい説明はあえて避けるが、舞台に独り残ったブリュンヒルデは、客席に向かって「ブリュンヒルデの自己犠牲」を歌い上げ、問いかける。あなたにとって指環とは何ですか?と。
歌詞はそこで、読み替えられるのでなく、本来の意味をつかみ出される。
ツァグロゼク指揮のシュツットガルト州立管弦楽団は明瞭な演奏で、ワーグナー後期作品の中では比較的抹香くささが薄く華やかな響きの本作には良く合っている。
現代的演出に食傷気味の方にも、ぜひお勧めしたい。面白さ、興味深さではなく、真っ当な感動を得られると思うから。