本書は、重厚な専門書である。
データの分析や過去の研究、国際比較など、隙のない実証を元に、
問題解決のためのワークライフバランスへの現実的な提言が導かれている。
でも、こんな時代。
ワークライフバランスの実現のために、何を、いかに、変えていけばよいのか。
提言に関心がある方は、たくさんいらしゃるんじゃないだろうか?
働きながら生活もたいせつにしたい人、働きながら社会に関わりたい人、育児や介護との両立に悩む人。
専門家以外の多くの方に、著者の提言を読んでほしい。
提言を読み、気になったところから、実証の部分を読むという読み方もできる。
本書が一般の方に届かないのなら、新書で、提言だけでも読めるようにならないだろうか。
ことばは、とても平明だし、実証を経ているという安心感もある。
この本が、社会に響かないのなら、出版の力って何だろうとさえ、思う。
わたしが、印象深く感じた箇所を3点。(ほんとは、もっとある)
・【ワークシェアリング・過剰就業(働きすぎ)】について
正社員の固定費用(各種手当など)が、ワークシェアリングを妨げる要因となっている。
正規雇用/非正規雇用の賃金格差、同一労働同一賃金とも併せて考えると興味深いー。
・【出生率と両立度(仕事と育児)】について OECD調査よりー
「託児所の充実や育児休業」よりも「職場や労働市場の柔軟性」のほうが2倍、出生率への影響が大きい。
どちらも大切だが、働き方の柔軟な選択肢が増えることが重要ー。
・【南欧諸国と日本】の特殊性について
これらの国々が、他のOECD諸国より出生率低下傾向が大きい。
男女の役割分業意識が比較的強い。また、仕事と家庭の両立度が低い。
(ひょっとして、これらの国の財政の不健全さとの関連も導けないだろうか?
少なくとも日本においては、男性一人で稼がなければならないことと、
公共事業への支出の高さは、関連があるはず)
少し疑問に思った点は、本書の本筋からは的外れかもしれないが、「労働生産性」について。
著者は、日本の「労働生産性」が諸外国に比して低いことを、解決すべき問題、と捕らえている。
分業化・効率化を省くことで、労働生産性は上がる。
それは、低賃金パートタイムを温存させることにならないか?、という疑問を感じた。
また、好きな仕事で食う、といった自営業の方の働き方を見ていると、
労働での自己実現のためには、効率の悪さもやりがいだし、やむなし、という面もあるような気が。
とはいえ、社会保障はすべての納税者の負担である。
だれが犠牲になっているか、には敏感であるべきだ。