本書におけるワーキングプア(WP)は、A「企業の倒産やリストラにより、転職を余儀なくされた中高年層の一部がWPに陥るケース」、B「企業の安価な人件費指向に伴う非正社員の増加により、職業スキルの向上やそれに伴う所得環境の改善が見込めず、いつまでたってもWPから抜け出せないケース」の2つに大別できる。(その他、シングルマザー、ニート・フリーターなどもあるが)
これに対する施策として、Bでは正社員への道を広く開放すること(機会の平等性)と(時間給ではなく)能力に見合った賃金を支払うこと(評価の平等性)が掲げられている。一方、Aに対する具体的な施策が書かれていないが、実はここが非常に難しい問題である。
本書ではAに対して「弱肉強食の資本主義と割り切って見過ごしてもいいのか(P69)」と疑問を投げかける一方、Bでは「機会の平等」と「評価の平等」を確保することが必要(P183)と述べているが、これは端的に言ってしまえば競争主義であり、これらを推し進めればAに影響が出ることは避けられない。今の日本や企業が置かれている厳しい環境下でこの2つを両立することは、果たして可能なのか、Aに対する施策はあるのか。本書を読んでからずっと考えている。
Aに対する施策(考え方)として、個人的には大前研一著「日本の真実」と、フランスの子育て支援策等(日経新聞2007.7.9)にヒントが隠されているのではないかと思うが、これまでの「標準的」なライフプランというものが通用しなくなりつつあるなか、我々は自分の人生ともう一度、真剣に向き合う必要があるかもしれない。
さらに、もう一つ忘れてはならないのが「心のワーキングプア」、ここに言及してる著者の洞察力に敬意を表したい。
考えさせられることが多かった良書の一冊としてお薦め