「なぜそんなに『すごいこと』が日本で起きていて、それが『きちんと伝えられていなかったか』・・・」
「どう考えても、深刻な問題、『新たな貧困』という事態が発生している・・・」
冒頭に提示されるプロデューサーによる感慨・問題意識は、本書を読んだ読者も必ず感じることができる。
2006年、2回に分けて放送されたドキュメンタリを書籍化した。放送では十分わからなかった細かな情報が文字とすることではっきりと描かれる。
ネットカフェ難民、ワンコール派遣に始まり、3ヶ月の収入が10万円にも満たない秋田の寂れた商店街の一洋服店。80歳が近いというのにアルミ缶拾いが唯一の収入源である京都の無年金の老夫婦。二人の子どもを抱え夜・昼にパートとして毎日の睡眠時間が4時間のシングルマザー。育ち盛りの子どもを抱え、3件のガソリンスタンドのバイトを掛け持ちするシングルファザー。児童擁護施設に収容される子どもの数は大きく増えている一方で、予算が十分ではなく、また18歳までしか居られない(高等教育を受ける機会を奪われる)実態。海外からの安い製品に対抗するために海外からの安い就学生に頼らざるを得ない零細繊維業者とそれがまた新たな価格低下を促している実態。
次々と紹介される事例は全国に跨り、丁寧な取材は、いずれも普通の、善良な人々がいとも簡単にこのような悲惨な状態に陥っているという事実を描き出していく。
ともすれば、格差が有るとか無いとか、格差のある社会のほうがむしろ望ましいとか、本件が陥りがちな机上論は、本作の地道で丁寧な取材により描かれた圧倒的な事実を前にすると、全くの無意味なものに思われる。
決して声高ではない主張が全編を貫き、ずっしりと重い。