世評では、70年代のハリウッドの風雲児にしてカリスマ監督の座を欲しいままにしていたフランシス・フォード・コッポラが、巨額の資金で作り上げた自身のスタジオ・ゾーイトロープを破産させ、その輝かしいキャリアから転落、その後永らく低迷する契機となってしまった大失敗作として記憶されている今作。
確かに、ラスヴェガスの街そのものを、スタジオ内にそっくり作ってしまう冒険(と言うか、暴挙と言うか)、今から思えば今日の撮影技法を先見していたが、綿密の打ち合わせの下、一度ビデオ撮りした後、それを確認しながら改めてフィルムで撮影すると言う、当時としては恐ろしく手間暇がかかり誰も行わなかった革命的試み、そして、既存の華麗で夢のあるハリウッドのミュージカルとは及びもつかない、もう若くないくたびれたカップルの一夜のアヴァンチュールと復縁と言うお話に(しかもこれ、れっきとしたMGM映画で振付はジーン・ケリーなのだ!!)、トム・ウエイツの手によるブルージィな楽曲の数々と、その反ハリウッド的実験に人々が困惑、ブーイングの嵐だった事は理解出来るし、実際、良い役者だけど華のない主役ふたりによる倦怠劇は重くヘヴィなんだけど、それでも、ナスターシャ・キンスキーの可憐さ、ウエイツ&クリスタル・ゲイツのメイン・テーマ、名カメラマンのヴィットリオ・ストラーロの、スタジオ撮影を生かした独創的で極端な色彩感覚とライティング、縦横無尽なカメラ・ワークの素晴らしさは、やはり捨てがたい魅力を放っていると思う。
ひとりの天才監督が転落にまみれてしまったその野心的な試みは、狂気、過信では留まらない。
映画ファンなら、廉価化を機に観ておいてもソンはないし、是非ともBlu-rayでも再見してみたい作品だ。