東西対立末期、科学技術の発達する中、依然として大国間の核戦争が現実的に起こり得た時代という世相を反映した作品ですね。
今でこそソ連のお粗末な国家体制は笑いのネタになりますが、当時は「鉄のカーテン」によって、ソ連軍が一体どういった秘密兵器を隠しているのかほとんどわからない状態だったと言われています。
ショーン・コネリーがソ連新鋭原潜の艦長役を演じた「レッドオクトーバーを追え」などのハリウッド映画など、ソ連の秘密兵器という設定は定番ネタであると同時に、普遍的な設定でもあったわけです。
小林先生はこの作品以外にも、日本にソ連軍が侵攻してくる作品などを発表していますが、そういった時代の波をうまく日本人向けにアレンジするのが上手だったと思います。
今作は完全なSF作品ですが、冒頭の核戦争の後に核の冬などによって人類が滅びの道を辿り、
一部の人間だけになっても更に戦争を続けるという一切の救いがない描写などは、
まさに冷戦時代の米ソでは決して架空の話ではなかったことがベースになっています。
SFとはいえ、小林先生の作品ですからやはり戦記として始まり戦記として終わるのは流石です。
世界観は緻密に書き込まれていても、
変に「語らない」主人公というのも小林先生らしいといえます。
あくまで世界があって、その中に主人公がいる。
そういう描き方をしている方なのだと私は思います。
だからこそ読んでいてのめり込める作品なんだと思いますね。