ダブリンの街は、あんな感じなんです。
少なくとも俺の知ってる、何年か前の街は、そうでした。
バスん中でギター弾いて歌う、端から見たら少々アホなミュージシャン。
残念ながら、例えば東京だったら、意地の悪い年寄りが心狭くにらむシーンの方が先に思い浮んでしまうんだけど、ダブリンでは、ちょっとびっくりしながらも微笑みかける、この映画のお婆さんのようなのが自然なんです。
この服どう?と声をかける客に「ゴージャス!」と、やる気なさげに相槌打つ古着屋のおじさんとか。
金盗んでおきながら、ぶちまけた金を結局は拾うの手伝って、「俺は駄目だけどあんたはスゲエよ」という駄目男とか。
ミュージシャン魂をくすぐられて思わずギターを奪って歌っちゃう融資担当とか。
買いもしないのに店の楽器を弾きに来るアマチュアミュージシャンを気に留めもしない楽器屋とか。
そういう街なんです。
そして、そういう街で生まれるのは、自分の願いにも、誰かへの想いにも、ただ素直に向き合うことに迷わない、素朴で、それでいて強くて、確かに光っている物語です。
だからって、東京よりダブリンの方がいい街なんだとか言いたいわけじゃないんだけど・・・、
ともかくこの映画には真実があります。
真実を描くものは、人の心を打ちます。
この映画は、そういう稀な作品のうちの一つです。
このサントラは、映画に心を動かされた人なら、間違いなくお勧めだと思います。
あの、スタジオで初めて演奏するシーンで、ドラムが入って来るあたりでエンジニアが思わず引き込まれて手を動かし始める時、映画観てる人たちも同じ気持ちだったと思うんだけど、それを曲を聴くたびに思い出せるのだとしたら・・・。
きっと毎日がほんの少しだけ、楽しくなります。
ほんの少しだけでも。