お薦めの小説です。
留学生として来日されて、20年ほどになる中国出身の女性が日本語で書いた作品です。
昨年、文學界新人賞に選ばれ、今年の1月には芥川賞の候補にもなったので、ご存知の方もあると思います。
内容は中国人の花嫁を日本の男性に紹介する事業を始めた中国人女性の半生記です。自身も同じような立場で来日したという経歴をもっています。詳しい内容は読んでからのお楽しみということにしましょう。
一言で言って、古いタイプの小説です。しかし、胸を打つものは普遍であるということも事実です。私は、1980年代に、「黄色い大地」「紅いコーリャン」等の中国映画に魅せられた時代を思い出しました。なぜ、あの時代、これらの中国映画が心に響いたのか。それは、私たちが、日本の映画が失ったものをこれらの中国映画に求め、そして、見つけていたからです。人生を正面から見つめる、人生を正面から描く、そんな普通のことを、日本映画は忘れていたからだと思います。
この小説も同じです。日本の小説に描かれることの少なくなった、人の人生がここにはあります。私たちは「人生」を読みたい。ともに生きたい、味わいたいという気持ちを持っています。それに応えてくれる作品です。
一時期「在日」の文学が盛んだったことがありました。(今も活躍されている皆さん、ごめんなさい)この楊逸さんの登場は、「新渡日」の文学の到来を予見させます。まだまだ書くべき素材を持っている人だと思います。これからの作品にも期待がもてます。