ワーグナーの「管弦楽名曲集」の入門編としてバランスのとれた選曲でしょう。多くの人が知っているワーグナーの前奏曲や序曲が収録されています。
廉価盤なのは、録音年代が1961年、65年、73年と古いせいでしょう。いずれもウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏ですし、指揮者がサー・ゲオルグ・ショルティ、ズービン・メータ、ホルスト・シュタインですから、お買い得です。近藤滋郎氏の解説もリーフレットに掲載してありますので、音楽内容の理解を助けてくれるでしょう。
ワーグナーの音楽をよく演奏したこともあり、久しぶりにこれらの音楽と向き合いました。いずれも雄大で華やかな音楽ですが、調性の変化、複雑な和声進行などは聴くよりも演奏することで体感するわけです。
ラストの「ワルキューレの騎行」のワルキューレたちの素晴らしい歌唱は聴きものでしょう。ブリギッテ・ファスベンダー、クラウディア・ヘルマンというソリストたちの名前を見るだけで演奏の確かさが伺えますが、戦いの乙女が天空を馬で駆け回る情景が見事に表現してありました。管弦楽だけでなく、声楽が入ってこそ楽劇の魅力が伝わってくると確信しています。これはサー・ゲオルグ・ショルティの指揮によるもので、半世紀ほど前の演奏ですが、定評通りの大きな演奏を披露してくれています。
楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲は説明不要でしょう。前奏曲の中に、楽劇の音楽の要素や動機が上手く散りばめられ、ダイジェストの役割を果たしています。壮大な4時間の楽劇をしっかりと聴こうという心構えを待つワクワクする瞬間がたまりません。
ワーグナーの毒と言う言葉を聞きますが、音楽志向としてのワグネリアンの気持ちは理解できます。