外務省、ひいては日本国にだまされた形で南米へ移住し、辛酸をなめた人間たちの復讐譚(たん)が、骨太につづられる。爽快なリベンジというのは妙な話だし、書名と装丁からも、盛大に人が死んだり大量な血が流れるステレオタイプなクライム・ノベルを想像しがちだが、それはまったくの間違いだ。垣根の作品に共通する要素は、「美意識を共有する者同士は、初対面から信頼しあい決して裏切らない」というテーゼと、自動車マニアやメカ好きなクールガイが多く登場する、という2点。また、ある種の性善説にもとづく博愛的世界観および諦念、それから底辺に生きる人間への優しいまなざしも随所に感じさせる。本作では、それらの「垣根要素」がうまくミックスし、更に2か月にわたる南米取材を糧に、存在感のある登場人物が大活躍する理想のリベンジ譚となった。
主要な登場人物ではないが、外務省襲撃の目撃者で夜ごと首都高をとばすルーレット族の男性が、「機関銃がバンバン撃たれているところを見たかった」「外務省が嫌いだから…ザマアミロって思っていた」と証言する場面がある。読者の気分を代弁すると共に、ヒッチコックのように、一瞬作者が姿を現したようで面白い。今後も目の離せない書き手のひとりだ。(坂本成子)
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