初出は1984年の『週刊朝日』。
「近江散歩」と「奈良散歩」の2篇が収められている。
近江では浅井長政と琵琶湖が語られる。浅井長政は、なぜ信長につかなかったのか。琵琶湖が汚染や埋め立てから逃れて再生に向かいえたのは、なぜなのか。この二つの疑問を追求することで、「近江衆」、すなわち滋賀県人の性格が解き明かされていく。過去と現在の問題が混じり合って描かれることで、歴史の奥深さを感じさせられる。
しかし、本書の中心となっているのは「奈良散歩」。興福寺と東大寺という二大寺院の歴史、というか両者の辿ってきた道の違いが描かれ、非常に興味深い内容となっている。興福寺が明治維新でつぶれかかったのは、なぜなのか。東大寺の修二会は、なぜ千年以上も途切れずに続いているのか。
寺という「空間」の特異性を見事に解き明かした好篇。