表題作は全SF者必読。
昨年に
『時の娘 ロマンティック時間SF傑作選』を編んだ中村融氏による、宇宙開発SFばかりを集めたアンソロジー。
知られざるソ連宇宙開発に取材した作品、クラークのアイディアを織り込んだ歴史改変SF、アポロへの限りない賛歌、平行世界ものとバラエティーにも富んでいます。なかでも、先日亡くなられた浅倉久志氏が訳された表題作は、(際どい設定の)極めつけの傑作。
アレックスはまるでグレイそっくりに生まれた少年で、宇宙への限りない憧憬を抱き、ワイオミングの田舎からあこがれの宇宙を目指す。しかし、時代は疑似科学が幅をきかせ、宇宙開発は見捨てられ省みられることがなかった……。彼とその盟友(本作の語り手)コリンは、誤解と困難をものともせず有人火星探査を現実のものとします。
周囲の好奇の目と晒され、疑似科学に何度も行く手を阻まれそうになったアレックスが、最後に社会に向けて語りかける言葉は涙なしに読めない。それは我々の社会に対するメッセージでもある。繰り返す、必読。
英国に住む少年が月を愛し、アポロ計画にありったけの情熱を傾ける「月をぼくのポケットに」(編者による初訳)も素晴らしい。
宇宙は、我々の想像力を刺激してやまない。本書を読んだら、ソラを振り仰ごう。