ニューシネマが衰退し、SFと女性映画が隆盛した70年代末のハリウッドで、徒花の如く産み落とされたのが今作。ベトナム後遺症を扱った映画だが、決して社会的メッセージがある訳ではない。これは、戦場と言う極限状況下での凄惨さ、修羅場を生き残った男の狂気と哀しみが充満するバイオレンス・アクションの快作。
帰還したベトナム戦争の英雄を待ち受けていたのは虚無感と疎外感、そして妻の背徳。祖国の為に命を賭けた代償として受け取った金貨は、ならず者たちに強奪され、唯一無二の存在の息子も妻と共に殺され、自らもディスポーザーで手首を破断させられるも、ベトナムでの8年もの捕虜生活とベトコンの拷問にも耐え抜いた男は、苦痛をもろともせず、黙々と義手を作り上げていく。
今作が凄いのは、復讐に取り憑かれたその念だけが、主人公に生きる目的、充足感を与えている処だ。彼は、家族への思い、平穏な幸せ、喜びや悲しみと言った人間的感情など、もはや何も感じる事は出来ないのだ。
そして、同じく故郷に帰っても生き場のないかっての戦友とのみな殺しの道行。
耐えに耐えた末の憤怒の爆発、これって正にかっての東映任侠映画そのままじゃないか。それもその筈、脚本はやくざ映画の大ファンでハリウッド映画「ザ・ヤクザ」でその思い入れを謳い上げた、大傑作「タクシー・ドライバー」の御存知ポール・シュレイダー、監督は、これまたやくざ映画へのオマージュのようなタッチの悪党パーカーシリーズの映画化「組織」を撮ったジョン・フリンだ。
70年代のクセモノ俳優ウイリアム・ディヴェインの自身のベスト・アクト、若き日のトミー・リー・ジョーンズも颯爽としている。
寡黙に“義手”を扱う主人公、ストイックな男の生き様アクション映画。そう言えば、同じ78年公開作品で、やはり孤独で寡黙、“GUN”への拘りがクールだった故アラン・コルノー(合掌!)の「真夜中の刑事・PYTHON357」も、是非再見したい。DVD化されないかな。