クックは初期から買って読んでいたけど最近の作品は買うだけでほったらかしてましたが、移籍に驚いて買ってすぐ読んでしまいました。
話は主人公が帰郷してかつての知り合いと昔のことを話している内に過去の出来事に意外な側面が見えてくるという展開でした。ここで出てくる登場人物たちの行動や思惑に対して私は誰が悪く誰が良いとはっきりいえない複雑な感慨を持ち、何度も出てくる作者の「人生の最終的で最大の希望は何なの?」という多分読者への問いかけにも明確な答えを持てませんでした。それはこの小説を読んだ他の人もそうであろうし、もしかしたら著者のクック自身もはっきりした読者を納得させうる答えを提示できないのでは、と思いました。そしてこの境地は初期のクックも書けなかったろうと思いました。初期から更に深化したクックの小説家としての技量に感銘をうけました。私の読んでない近作でも多分更なる高みに達していることと思います。内省的だけどあまり暗くならず、読みやすいけど通俗にならない文章も素晴らしいと思います。
前の版元の時、たまたまクック担当の編集者の方とメールをやり取りする機会があり、初期の数作で未訳になってるものはどうなっているか聞いてみたら試行錯誤の時期に書かれた感じで売れそうにないので出せないのと、毎年1作書く人なので出す隙間がない、とのことでした(実際、初期ので後から翻訳された「神の街の殺人」はクックの中で売り上げが1番良くなかったそうです)。移籍を機に(言葉は悪いが)在庫一掃の形で何とか翻訳してもらえんもんでしょうか。他のクックのファンも同じ気持ちだと思いたいです。