本書は、ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスからテオドシウス帝まで、そして帝国の東西分裂後は西ローマ帝国の歴代皇帝を最後の皇帝ロムルス・アウグストゥスまでの全皇帝を採り上げ、各皇帝の治世・事業(特に建築・軍事)・個性・素顔(彫像の写真を多く収録)を、エピソードを交えて1冊で紹介します。英語の原著Chronicle of the Roman Emperors: The Reign-By-Reign Record of the Rulers of Imperial Rome (Chronicle)の訳本であり、原著よりコンパクト。同じシリーズで共和制崩壊までを扱った古代ローマ歴代誌―7人の王と共和政期の指導者たちと同サイズでしかも頁数はこちらの方が若干少ないです。塩野七生氏の「ローマ人の物語」第6巻以降を1冊に凝縮し、それでいて各皇帝の事績の紹介が雑になっていない点が立派(もっともコンスタンティヌス帝の後はかなり駆け足になりますが)。地図等カラー印刷の多い図版の豊富さも圧倒的。その「ローマ人の物語」とは記述が異なる箇所も散見されますが(例えばコモドゥス帝は死の直前に何を企んでいたか等)、古代史の解釈は人によって違うのも当然。塩野氏とは異なる角度でローマ帝国史を通覧できます。カスタマー氏も指摘しているように訳に一部問題があるので、ローマ帝国の歴史が頭に入っている人には、原著にチャレンジすることを勧めます。知らない単語が出てきても、ああこれは背教者だな、といった具合に検討がつくので、それほど読みづらさを感じないと思います。ケンブリッジ大学のローマ史の泰斗である著者の格調の高い英文を味わうのも一興です。