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ローマ人の物語 (9) 賢帝の世紀
 
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ローマ人の物語 (9) 賢帝の世紀 [単行本]

塩野 七生
5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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年に1冊のペースで書き下ろしているこのシリーズ。今回はローマ時代の「五賢帝」のうちトライアヌス、ハドリアヌス、アントニウス・ピウスの3人を取り上げている。トライアヌスは、ローマ帝国初の属州出身の皇帝であり帝国の版図を拡大する。ハドリアヌスは、トライアヌスが拡大した帝国内をくまなく巡察し統治システムをたて直す。最後のアントニウス・ピウスは帝国内の政治を充実させ、治世者というよりも帝国の父親役を見事に演じきった皇帝である。
おもしろいことにこの巻は著者の意外な愚痴が導入となっている。前々作の『悪名高き皇帝たち』に列記されていた皇帝たちとちがって、「賢帝」たちに当時のローマ人自身が心底から満足していた。それゆえに同時代に生きた歴史家タキトゥスたちが書く動機を失い、史料を残していないことを著者は嘆いてみせる。とは言いながらも、当時のローマ人が「黄金の時代」と言った時代を生み出した皇帝たちの治世の手法、人格、思考などのさまざまな側面を、残された史料から見事に再構築している。
そのひとつにトライアヌスの皇后プロティナが若きハドリアヌスを「可愛がった」ことについて、多くの歴史研究者が実際の関係を探ろうとして失敗しているという記述がある。それに対して塩野七生は、10歳は年上の女性が年下の男に「弱くなる」条件を提示し、2人の間に肉体関係はなかったと断言する。このくだりの説得力と筆述はまさに本書の醍醐味である。そしてトライアヌスの章の最後で、その肖像への語りかけに著者の最大級の愛情を感じる。(鏑木隆一郎)

内容(「BOOK」データベースより)

紀元二世紀初頭、ダキアとメソポタミアを併呑して帝国の版図を最大にした初の属州出身皇帝トライアヌス、帝国をくまなく視察巡行し、統治システムの再構築に励んだハドリアヌス、穏やかな人柄ながら見事な政治を行なったアントニヌス・ピウス。世にいう五賢帝のなかでも傑出した三者の人物像を浮き彫りにした、極め付きの指導者論。

登録情報

  • 単行本: 390ページ
  • 出版社: 新潮社 (2000/09)
  • ISBN-10: 4103096187
  • ISBN-13: 978-4103096184
  • 発売日: 2000/09
  • 商品の寸法: 20.2 x 14.6 x 3.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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最も参考になったカスタマーレビュー
9 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By カスタマー
形式:単行本
”ローマ史”そして様々な皇帝の一般的な評価を鵜呑みにせず、原資料を使って丁寧に、しかも時には女性の視点から大胆に再構築して書く彼女のスタイルは、たとえ非常に原資料が少ないこの「賢帝の時代」でも見事に生きている。

ただこの本はこの本一冊で評価するよりやはり「ローマ人の物語9巻」として評価する方が正しいとのでかはないかと思う。興隆を続けてきたローマとその哲学がこの巻での一つの頂点を迎え、そしてこれから始まるであろう衰亡への第一歩をも予感させるこの巻は全15巻と言われる彼女の壮大な連作の中でも大きな意味を持つと確信している。

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6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By ともぱぱ 殿堂入りレビュアー トップ50レビュアー VINE™ メンバー
形式:単行本
本書はギボンが「人類がもっとも幸福であった時代」であるとする五賢帝の時代のうち、トラヤヌス帝からアントニヌス・ピウス帝までを取り上げる。では、幸福すぎて何もドラマがない時代であったのか?そうではない。トラヤヌス帝によるダキア征服(そのためにドナウ川に常設の橋を作ってしまうローマの技術力には改めて感心させられる)、そして未完に終わったパルティア遠征、後を継ぐハドリアヌス帝登極を巡る謎、直後の四執政官経験者粛清事件、平和を維持するために帝国内をくまなく行脚するハドリアヌス帝(北アフリカでの兵士への演説は実に感動的な内容である)、その後継者がアントニヌス・ピウスに決まるまでの波乱、その一原因となった帝の寂しい晩年、そしてハドリアヌス帝が死後、暴君として元老院によって断罪されそうになり、アントニヌス・ピウスが必死に押しとどめたこと、といった具合に、ドラマティックな展開を列挙するのに事欠かない。そうでなければ、ユルスナールがトラヤヌス帝時代から始まるハドリアヌス帝の独白という形の「ハドリアヌス帝の回想」といった名著をものにすることなどできなかったであろう。本書を読まれた方は、是非「ハドリアヌス帝の回想」も読まれて、そこに漂う寂寞さを感じてもらえれば、この時代により親しみを持つことができるだろう。学者の書としては、南川高志教授が書かれた「ローマ五賢帝 『輝ける世紀』の虚像と実像」が実は元老院の最良の者を選抜するという名目の養子皇帝制など実は機能したことがないと喝破して大いに参考になる。そういった文献も踏まえてであろう、塩野氏は、この時代の光だけでなく陰の部分も丹念に、しかしわかりやすく描いており、本書は大いに推薦に値すると考える
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13 人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
毎年一冊の割合で出版されている塩野七生の「ローマ人の物語」も本書で9巻目となる。

8巻目の最後では、ネルヴァ、トライアヌスの二人の賢帝についてふれられていたが、その記述は意外とあっさりしたものだった。今回はそれに継ぐ三賢帝、即ちトライアヌス、ハドリアヌス、アントニウス・ピウスの3人の賢帝が主人公だが、先の二賢帝から一転して、著者の記述は詳細でしかも温かいものだ。

それは、この三賢帝が五賢帝の中でも特に優れていると評価が高く、ローマ帝国がその版図を最大にした時代のまさに絶頂期の皇帝であることに拠る。

賢帝の時代とは、即ちローマにとっての平和が築かれ、維持された時代である。平和の安定の時代とは歴史を物語として語る場合には決して素材として面白い時代ではないかもしれない。

しかし、著者は実は淡々として平和と安定を実現するために、これらの三賢帝がどのような施策を施したかを、鮮やかに描きだし、又、賢帝といわれる人々のその人間性に肉薄することによって、三賢帝の時代を、面白い物語として描き出した。流石の手腕ということができよう。

ローマの平和の礎となったのは、ローマ帝国が常に「安全保障」「国内統治」「社会資本の整備」に細心の注意を払ったからだといわれている。

国内統治の目的で行われたユダヤ人のエルサレム追放もこの時代に起きているわけだが、それが、その後2千年のユダヤ人のが「流浪の民」となった原因であること又、ローマ法の大幅な改編がなされたことなどを考えると、この時代のローマ史が、現代に与えている影響も実に大きい。

「平和と安定の維持」という命題は、現代の政治家にとっても大いに参考になるはずだ。このことを含めて「歴史に学ぶ」という言葉が、この「ローマ人の物語」を読むたびに、思い起こされる。

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