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目だった業績がないといわれ、むしろ悪く描かれることが少なくないティベリウスとクラウディウス、後世にその性癖や行動がスキャンダラスで畸形的に描かれるカリグラとネロ、本書で著者はこれらの皇帝たちの再評価を試みている。特にティベリウスについては晩年のカプリ島隠棲後の悪評は根拠がないと喝破し、カエサル、アウグストゥスの後を継ぎ、帝国の礎を築き覇権を軌道に乗せたという点でその内政・軍事・外交といった面での手腕を高く評価する。
著者の文章は、彼らの治世を様様な要素、政策とその結果、影響、外部環境、とひとつひとつ事細かに解きほぐしていく。後世の偏見や一面的な見方に惑わされず、複眼的な視点を忘れないその姿勢、論理的な筆の運びは見事としかいいようがない。史書を読み解き、推論し、平明な言葉でつづっていく。決して筆を急がず、かといって単調な一本調子でもない文章は読みにくさとも無縁。
この巻においても著者は、後の五賢帝時代の歴史家タキトゥスを高く評価し、彼の著作から引用するところが少なくないのだが、タキトゥスと見解を異にする部分などはきちんとその論拠を明らかにしていく。千有余年の時を超えての二人の対話を見ているよう。全巻にわたってこうした知的冒険のワクワク感に満ちており、飽きさせない。見事。
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