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たった一人の男の想像力と行動力が「パクス・ロマーナ」への道を開く。その視野の広さは、カエサルの、自己も含めた徹底した人間洞察力がなせる離れ業だった……。カエサルのカエサルたるゆえんが納得できる名著です。
人は自分が見たいと思うことしか見ない……。大いに反省させられる言葉ですが、カエサルと凡人との違いを決定付けるこの「眼力」の違いに着目し、軸足を動かさずにカエサルに肉薄しようとする塩野さんの決意のほどが伝わって来ました。
教育熱心な母アウレリア、息をのむような戦いを通じカエサルも一目を置いたガリアの英雄ヴェルチンジェトリクス、おそらく主義の違いを超えて人間の大きさに嫉妬したであろうキケロ。登場人物の一人一人が古代ローマという舞台で、生き生きと人生を演じる息吹が感じられます。
これまで年代を追っていく編年体方式で記されてきたローマ史は、ここでスタイルを変え、カエサルの出生から筆を始める。本巻では、後にローマを共和制から帝政へ大きく舵を切らせることになるカエサルの、前半生を描く。
ガリア戦争で見せる部下思いの統率力と決断力にあふれる指揮官、多数の女性との浮名を流したプレイボーイとしての一面。老獪な元老院の向こうをはって丁丁発止やりあう政治家としての一面など、カエサル像をあざやかに切り取り描いていく手際は見事。
カエサルを書きたいがために、ローマ史を描き始めた、という著者のいうとおり、ボリュームたっぷり読み応えもたっぷりだが最後まで飽かせない。
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