ローマの国をあげてのキリスト教化の流れは止まるところを知らない。聡明なユリアヌス帝はキリスト教化に反対したばかりに戦場で謀殺され、その治世は2年足らずで終わり、後にキリスト教史観の中で「背教者」の汚名を着させられる・・・。著者は、このユリアヌス帝の治世が十年以上に渡っていたなら、ローマ帝国やその後の西欧史におけるキリスト教の位置は変わったのではないかと説く。いわばユリアヌス帝がローマにとって、最後の希望だったというかのような扱いだ。
さまざまな異文化・宗教をも受け入れていたローマの寛容性は失われ、偏狭なキリスト教義の中で、建築物、彫刻、書物といった文化財が破棄され散逸していく・・・。ローマは内側からも世界帝国としての性格を失い、ついには皇帝の意見をも左右するミラノ司教アンブロシウスといった権勢家まで現れる・・・。
ローマ帝国内部をキリスト教が席巻し、本来備わっていた活力が失われていく中、国外の様々な状況に対処できる力が失われていく。
これまで皇帝の事績に沿って描かれてきた本シリーズも、ユリアヌスの次を描く本巻の最終章に至っては、皇帝からやや距離を置いた形で描かれていたのが印象的。