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危機の要因は種々考えられるが、それまでの興隆期や安定期に全く見られなかった問題は少ない。なぜ、この時代からは同じ問題を克服できなくなったのか。その原因を解明するために、著者は22人の皇帝の事跡を根気強くプロットしていく。
この時期に顕在化した唯一の新しい危機要因として、著者はキリスト教の広まりを挙げる。
衰退期を迎えたローマは蛮族やオリエントから攻め込まれることが多くなり、「神々はローマを守ってくれない。我々を見放した」と絶望する人も出てくる。一方、キリストの教えでは、何が起ころうと、それはすべて神の思し召しなのである。キリスト教徒が増え、いずれ公認されていく要因は、ローマ側の弱体化と疲弊化にあったのである。と著者は結論する。
いつもながら著者自身はあくまで当時のローマ帝国のことを述べているのだが、読者は思わず今の日本の社会情勢と比べて考えてしまう。また、それを狙って書いているようにも思える。少子高齢化による長期低迷傾向にある日本の現状を、著者はどのように見ているのだろうか。聞いてみたい。
また、最後のキリスト教考察は、僕には合点の行く点が多々あって刺激的でした。調査不足ではないかという指摘が別のレビュアーの方からありましたが、必ずしもそうともいえないのではないでしょうか。たとえば聖パウロと『使徒行伝』に関する指摘について、問題の個所は326ページだと思うのですが、文章は「聖パウロが『使徒行伝』中で説いたように」です。確かに聖パウロが書いたといっているようにも読めますが、塩野さんの意図は「『使徒行伝』の中に登場した聖パウロが述べたように」かと思います。
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