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5つ星のうち 5.0
ティトゥスに続いて皇帝となった弟ドミティアヌスは、死後「記録抹殺刑」に処せられる。(著書の帯より),
By Saburo Ochiaigawa "水村" (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: ローマ人の物語〈23〉危機と克服〈下〉 (新潮文庫) (文庫)
帝国の統治システムを強化し、安全保障にも尽力したにもかかわらず、なぜ市民や元老院からの憎悪の対象になったのか。(著書の帯より)「学者ではない私自身の人間性への観方だが、ローマ史を書きつづけるに際して私が、自分の判断の基準にしたことがある。それは、最高統治者である皇帝が成したことが共同体、つまり国家にとって良いことであったか否かを判定するにあたって、(中略)その皇帝の後につづいた皇帝たちが、彼が行った政策ないし事業を継承したか、それとも継承しなかったか、のほうを判断の基準にすえたのである。」(143頁)「では、このネロと同じく死後に「記録抹殺刑」に処せられたドミティアヌス帝の業績の評価は、どうなされるべきであろうか。私がこれまでに述べてきた彼の業績のすべては、法律実施の際の厳格すぎた点はゆるめられたにしろ、彼以後の皇帝たちにも継承されていくのである。(中略)だが、これらのどれにも増して特筆に値するのは、ライン河とドナウ河の両防衛線を連結することで防衛上の機能性の向上に功あった「リメス・ゲルマニクス」(ゲルマニア防壁)の建設であろう。これは、タキトゥスのような文人には無視されたが、ドミティアヌス以後の皇帝たちでその補強に心を使わなかった人はいない。」(146頁) 「まったく、運命とは何が機縁で変わるかわからない。人間の運不運を、幸運の女神の気まぐれの結果にしたがる人の気持ちもわからないではない。(中略)しかし、トライアヌスよりは二歳年上でしかなかったドミティアヌスには、幸運の女神は微笑まなかったのだ。」(134頁) 運命の機縁とは、意識するしないに拘らず、誰もが直面してきたに違いない。「いつも考えていることだが、物語るに値する行為を成す才能か、読むに値することを物語る才能かのどちらかを神々より与えられている人は、ほんとうに幸運な人だと思う。だが、より大きな幸運は、その双方ともを与えられた人だ」(28頁)
5つ星のうち 4.0
3人の皇帝,
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レビュー対象商品: ローマ人の物語〈23〉危機と克服〈下〉 (新潮文庫) (文庫)
「暴君ネロ」の死後、皇帝が入れ替わり立ち代り就任しややこしい『危機と克服』の巻。『危機と克服』文庫最終巻となるこの本では、ティトゥス、ドミティアヌス、ネルヴァの3名の皇帝が登場する。 善政を敷き始め順調かに見えたティトゥスが不運にも若死にし、弟ドミティアヌスが引き継ぎ、老年のネルヴァもあえなく普通に死去。この巻でも皇帝は目まぐるしく入れ替わる。 本書のハイライトは有名なポンペイの大噴火。遺跡のお陰で今ではものすごく有名だが、当時は今思うほどの大事件ではなかったとしつつ、 当時の書簡を用いてリアルな描写がなされている。この災害や、またも起こったローマ大火などの処理に追われているうちに 亡くなったティトゥスは不運としか言いようがない。思いがけず早くに帝位にのぼってしまったドミティアヌスは、 とりわけ軍務経験の不足から来る失敗も重ねながら、帝国の防衛線を堅固にし、公共事業も熱心に行っていく。 死後「記録抹殺刑」に処されたというドミティアヌスだが、なぜそこまで嫌われたのかが、あまり伝わってこなかった。 帝国の人々よりも家族など身近な人に恨まれた感はあるものの、それは元老院による記録抹殺刑決議にはつながらない。 『危機と克服』最終章というわけで、年表と文献表が付されている。また、巻末にスペイン属州から上京した詩人マルティアリスの小話が盛り込まれ、これはおもしろい。
5つ星のうち 4.0
災害に倒れた皇帝、「記録抹殺刑」にあった皇帝,
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レビュー対象商品: ローマ人の物語〈23〉危機と克服〈下〉 (新潮文庫) (文庫)
ローマを再び安定化させ、天寿を全うしたヴェスパシアヌスの後、皇帝についたのは、父とともに国政を担ってきたティトゥス。ヴェスパシアヌスによって、ユダヤ反乱平定という「箔」までつけてもらい、早い時期から次期皇帝継承者として仕事を任されてきティトゥスは、塩野氏によれば「(この人ほど)良き皇帝であろうと努めた人もいな」いというほど、真面目に精力的に皇帝の仕事に没頭します。しかし、その治世におきたヴェスピオ火山噴火とポンペイの消失、そしてローマの大火という度重なる大惨事。心労からか、ティトゥスは就任後2年で病死。とりたてて欠点(失政)のなかった皇帝を皮肉好きのローマ人が評した言葉「治世が短ければ誰でも善き皇帝でいられる」には笑ってしまいました。ティトゥスの次は、その弟ドミティアヌス。死後「記録抹殺刑」の処される皇帝であり、よほどの悪政を行ったのかと思いましたが、ドナウとラインの両河をつなぐ「ゲルマニア防壁」を築くなど、後世にも残る(刑によって名は残らないけど)事業や施設を実施。しかし、その治世も暗殺によって幕を閉じます。 ドミティアヌスの項はその治世の長さ(15年)の割りに、「記録抹殺刑」の影響で資料が少ないせいか、塩野氏の記述もどこか淡々としていて、印象が薄いように思います。 ところで、本編の最後の「ローマの人事」の部分は、人材(国家のリーダー)育成の視点から ローマの強さを感じさせる内容で、短いながらも佳い文章でした。
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