ローマ史どころか世界史に興味がなくても誰もが知る暴君ネロ。暴君ハバネロという菓子があるほど知名度は高い。
母殺し、妻殺し、ついでに師のセネカも自殺に追い込み、ローマ大火の責任はキリスト教徒になすりつけ、
といった「業績」があるために、とにかく残酷なイメージが強い。妻を殺したのも妊娠中で、体内の胎児を見てみたかったのだと聞く。
しかし、「悪名高き皇帝たち」という題を反語的につけた著者の姿勢は、当シリーズ一貫して、「本当にそうであったのか」に尽きる。
「悪名高き皇帝たち」は悪く言われ、治世の一部であれ不人気であったのは確かである。しかし、著者はネロも単なる暴君と断ぜず、
悪事を行った場合でもその行動の背景を丁寧に描いている。この結果、母殺し妻殺しにさえも、それなりの理由が与えられる。
この作品中に描かれる姿においては、ネロは単なる気まぐれに残虐行為を行うクレイジーな男ではなく、
彼なりに必要に迫られて極端な事をいろいろやってしまい、周囲に「これはまずいのではないか」と思わせてしまったようだ。
家族を殺したのも、少なくともイメージは良くない。その結果、軍団や市民の反感も募ってしまったのだった。
暴君ネロを新たな視点から描いた一作。巻末には「悪名高き皇帝」時代の年表と、参考文献表が付されている。