この本を読んで、ローマ史ファンになった。冒頭に著者が書いているように、私も、この本を読むまでは、西欧の古代史はギリシアであって、ローマは模倣の頽落形態だと信じていた。だが、本書は、そんなイメージを一新してくれる。人間という変動が大きい商品を扱う先物取引としてのローマの政治を、スピーディで明快、簡潔、ユーモラスに描き切る。しかし、変な端より方はしていないので、複雑な社会状況や人間関係がヴィヴィッドに描かれる。なんと言っても、著者の鋭い人間洞察が魅力だ。やわなヒューマニズムや勝者の提灯持ち的な言はどこにもない。それが時に凄まじく、時に無常感が覆い尽くす。古代ローマ人は「イタリア人」だったんだな、という身近な感じも良い。著述は、共和制ローマまでは、スラからカエサルまでが山場。帝政期はオクタビアヌスからティベリウスまでと五賢帝のハドリアヌスが魅力的だが、崩壊期のローマの描写が凄まじくも引き込まれる。こうして、西ローマ崩壊までが一気呵成に語り尽くされる。もったいぶった説明も無く、たった1冊で分かってしまう、素晴らしい名著だと思う。