アレクラスト大陸の遥か南・・・ではなく、本書はエーゲ海はロードス島、1522年8月始めより同年12月末まで戦われた聖ヨハネ修道騎士団とオスマン帝国との攻防戦が描かれています。著者の常のように、地中海世界大の視点と個性の違う3人の騎士の視点を縦横に行き来し、世界史の流れと籠城する騎士達の心の動きが躍動的な筆致で描写されており、良書であります。
しかし、私は著者に「ローマ人の物語」で初めて触れたクチなので、本書の体裁には多少戸惑いました。全体はあくまで歴史著述として書かれているにも拘らず、時たま挿入される小説的な文章。それでいて説明のための不自然に長い台詞があったりで、何のためにこのようなノンフィクションと小説の混合形態をとっているのか、よくわからないところがあります。また、あまり読みやすいとは言えない、長い形容詞節を多用する著者の文体はこの時代から健在であり、比喩表現に引っかかる重複があったりできれいではありません。しかし、著者は名文家ではありませんが、その文章には不思議な力が宿っており、読み進めるうちにどんどんと引き込まれ、不覚ながらその物語に胸を打たれてしまいます。最終局面である、オスマン帝国の猛攻に次ぐ猛攻からフィリップ・ド・リラダン騎士団総長とスレイマン一世皇帝との会見までのくだりは一気に読み進め、心地よい余韻に浸りました。
最後に、十字軍時代以降の聖ヨハネ修道騎士団の歴史は日本語での資料が限られており、本書は貴重な文献です。ですが、上記のように小説との境目が曖昧な記述であるため、参考文献の明記がほぼ絶無であり、その後の読書案内に何一つ寄与しないのが極めて残念でなりません。