ローカル線に関する議論は、路線廃止の度にされるセンチメンタルな報道以外は、鉄道ジャーナル誌での散発的な記事と
『第3セクター鉄道』(香川正俊)くらいしかなかった。
上書籍はローカル線維持の財源に関して、「過疎地域を造った責任は国と財界にあり、税制を含め同地域の「再生」に貢献する義務がある」(同書199pほか)と共産党員のような主張をしており、「輸送密度や混雑率、路線長などの指標で路線廃止の基準とする議論は…極めて正しかった」という健全な立場を取る本書は、企業経営者に通用する学術書として唯一初めてのものだと言える。
著者は元々鉄道ファンではないそうで、だからこそ、統計データの財務分析を中心とした冷静な学術書になっている。一方で、会津鉄道の前副社長、群馬県交通政策課長、地域NPO法人の代表者など現場サイドの話もコラムとして収録されている。
本書で示されているように、鉄道は設備の維持・運営費が莫大で、一定の需要がないと運営が成り立たない。技術面でも、鉄道は高速大量輸送に適した輸送形態であり、ローカル線はこの対極に位置する。鉄道というモードを選択する合理性に乏しいのである。
なぜ鉄軌道による終日運行でなければならないのか? 筆者は「路面電車はライトレールへと再生し、地方鉄道は地域社会・事業者および沿線自治体による三位一体の体制で存続すべし」と主張し、その理由として、過疎化の拍車防止、都市の無秩序なスプロール化の抑制、地球温暖化対策を挙げる。
ここまでくると、赤字ローカル線の維持はもはや交通政策としては意味を持たない。限られた財源の中から、医療・教育・福祉等のオプションとの取捨選択になる。著者の言う通り「国土(過疎化)政策、文部(通学・進学)政策、福祉(高齢化)政策など、交通政策を超えた国レベルでの重畳的な施策が望まれる」だけでなく、国から地方自治体への税源移譲と、形骸化した地方議会の再生が不可欠になる。今後議論が深まることを期待したい。