映画ファンなら、“今まで観た映画の中で最も好きな映画は?”と尋ねられて、答えに窮した経験をお持ちの方は多いと思います。
私も、大好きな映画は、それこそ数多くあるので、その時の気分でチョイスする映画はまちまちなんですが、でも、どんなケースでも、必ず脳裏をよぎる映画はあります。それが、今作なのです。
そのどこが私の心を打ち続けるのか。
まず、男性派アクション映画として、途方もなく面白い事が挙げられます。
収容所の中で繰り広げられる看守VS囚人、ならず者たちの殴り合い、じゃなかったアメフト試合。
全編、痛快、豪快、爽快なタッチに脈々と流れる反骨精神。バーナデッド・ピーターズのパートのように、艶笑コメディとしてのテイストもしっかり押さえてあります。
これだけでも十分満足なんですが、更に今作が感動的なのは、自尊心、誇り、復権、信条についての物語でもあるからです。
言うまでもなく、囚人たちはいずれ劣らぬ狂暴な凶悪犯ばかりです。でも、アウトローな彼らにも、決して失くす事が出来ないモノがあります。それは男としての“規範”であり、“誇り”です。
主人公のポール・クルー(バート・レイノルズ、颯爽としています)は、当初彼らに徹底して嫌われます。それは何故か。彼はアメフトのスーパースターであったにも拘わらず、ある事情で八百長をした。つまり、“仲間を売ってしまった”からなんですね。
囚人たちにとっては、たとえ悪党であっても、仲間やファンを裏切った事が許せない、お前には誇りがないのか、と(笑)。
クルーは苦悩しながらも、信頼関係を培っていきます。しかし、試合中に権力の権化の収容所長(エディ・アルバートが絶品です)から、またしても八百長を強要されます。しかも、言う事を聞かなければ一生塀の外には出れないとの脅迫もされる。以前、やっているから、今度も出来るだろう、とも。で、クルーはどうするのか、塀の外の自由か、自尊心か。
葛藤するクルーは、かってささいな罪で投獄されながら、所長を殴り、老いてなお服役中の老囚に尋ねます。あの時、所長を殴った事、後悔していないのか、と。
そこから先は是非映画で確認して頂きたいのですが、ロバート・アルドリッチの作家性に心震えます。こんな映画を作れるのは、現在ではもはやクリント・イーストウッドしかいないでしょう。
余談ですが、ラストの、看守長クナウァ(エド・ローター、彼も儲け役です)と所長、そしてクルーと所長の、ラグビー・ボールを介したやり取り、TV放映時での吹き替えの台詞がいかしていました。
オリジナルでは、それぞれ“Game ball”と“Stick this in your trophy case.”なんですが、高瀬鎮夫氏の字幕スーパーでは、「ゲームボールだ」と「大事にしろよ」と訳されていたのが、、TV版吹き替えでは、「あんたの負けだ」と「所長室にでも飾っとくんだな」。実に作品の本質を捉えた言い回し、残念ながら、今ソフトには吹き替えは収録されていませんが、今でもはっきりと覚えています。