同録の表題作「いつか王子様が」譚やら水玉キャラも切ないすれ違い初恋もの
雑誌収録時から読んでいたし、前コミックス「かなしいひとはどこにもいない」もあわせ
この作家のドライな絵柄に湿ったテーマな作風は最近注目していたひとりだけど
私的に一番頭をガツンとやられたのは「熱帯雨林の夜」。
この「好き」のもてあまし具合と渇き加減はもはやサハラ砂漠級。
なのにアンリ・ルソーの絵も連想できる冒頭の「失敗パーマ」からイメージされた
熱帯雨林には、同じく鬱蒼と暗く湿った欲望の存在を確かに見通せてしまい
ジャングルと砂漠もなるほど陸続きであるのかもしれない
なんていう、無駄に広大な納得さえ可能にさせてしまう。
あとがきではご自身かなり七転八倒されて創作されておられるようだが、
そんな懊悩とは無縁に見える軽やかさは画風もあろうけど、本来なら家庭の事情で
休学なぞという前時代的ともいえる展開でもそれほどシリアスに見せない「やもうえなさ」
の描き方が、主人公にそのせいでなく、好きな少年との別れを自覚させ涙させる
という王道ロマンスな表現を成功させ、かつ収まっているせいなのかもしれない。
ラストの一文はどこかの小さな曳き出しにそっとしまっておきたくなる切なさ。
こうしたリリシズムと純愛をさらっと描け、そうした作品の読者になれるとは、
本当に現代は良い時代だなあと思う。
しかし読み流したくはない今年のこの一冊。