『ロランの歌』は実在したフランク王国シャルルマーニュ大帝と、その甥ロランを中心に「異教徒勢」との戦いや両軍の武勲を描いた11世紀頃の作品。
「シャルルマーニュもの」と呼ばれる物語の一群が存在するほど、中世ヨーロッパにおいてはポピュラーな題材であるが、本作は中でも最も有名なもののひとつ。
本文庫は1170年頃のものという最古のオクスフォード写本を主に使って訳出したもので、写本通りに改行した詩のような体裁の翻訳になっている。
物語はシャルルマーニュ率いるフランス勢とスペインのイスラム教徒勢の争いに始まる。
王の甥ロランが廷臣ガヌロンを相手への使者に指名したことから、ガヌロンがロランへ恨みを抱き、スペイン勢と内通することがこの凄惨な物語の発端となった。
ガヌロンの背信行為によって計略にはめられたフランス勢、特に後衛を任されたロランの一軍とイスラム教徒勢の戦いが物語の大半を占める。
両軍入り乱れ、誰がどちらの軍勢の者なのか混乱してくるほどで、文章で読んでも戦闘の激烈さが伝わってくる。
また戦闘の描写は非常に生々しく凄惨で、思わず顔をしかめてしまうほどだった。勇ましく誇りをかけて戦う勇将たちの様子が細かく活写されている。
多くの主要登場人物が斃れる悲劇ではあるが、単に悲惨な話というわけではなく、殊にフランス勢の勇猛さ、高潔さが清々しく展開されている場所も多い。
巻末には詳しい注が掲載されているが、本文中には「ここに注が施されています」という事を示す印はないので少々不便。
また、翻訳は文語調で為されているため、表現・漢字共々読みにくい、理解し難い箇所が多かった。