アメリカ・ペンシルヴァニア州出身で2001年にデビューしたミステリー界期待の新鋭エリスが2007年に発表して大絶賛の嵐を呼んだ第三作目の話題作です。本書はロス市警強盗殺人課の女性刑事リーナ・ギャンブルをヒロインに据えたシリーズ第1作です。彼女は女性ながら凄惨な殺害現場にも決して怯まず、鋭い観察眼と想像力を発揮し固定観念にとらわれずに真相を暴きますし、例え上司から理不尽な命令を受けても自分が納得出来なければ拒絶する強い意志を持っています。私生活では未成年で親を亡くして弟と二人で苦労して来た過去があり、現在はひとり暮らしで男気はまるで無く、本書にロマンスの要素は残念ながら皆無です。ロス郊外の住宅で起きた妊娠中の主婦暴行殺害事件は当初アリバイのない夫に容疑が掛かっていたが、事件の担当となったリーナと相棒のベテラン刑事ノヴァクが探り出した手掛りから捜査の方向が修正され、美女ばかりを狙う猟奇異常殺人者「ロミオ」による連続殺人事件と断定される。やがて、数年前に殺されたリーナの弟の友人男性が、ロミオによる被害らしい女性死体の側で射殺死体の姿で発見される。リーナは不自然な状況に不審を覚え、迷宮入りとなっている弟の殺人事件の解明も視野に入れて事件に深く乗り出して行く。
本書を読んでジャンルとして、合間に異常殺人者ロミオの日常生活を挿み、緻密で丹念な警察捜査が結実して執念の末に犯人を追い詰める警察サスペンス小説だと思っていました。結果は間違いではありませんでしたが、それだけでなく終盤で仰天の結末が待っていました。この真相は少し狡猾な手ですが、思い返すと最初から周到に伏線が張られていて作者は完全にフェアです。心情的にやや引っ掛かりますが、著者の騙しのテクニックは秀逸で脱帽物です。★5つにするのはギリギリ躊躇しましたが、人間として逞しく成長したリーナの今後の活躍には大いに期待したいと思います。