絹糸のような光沢と艶やかさを感じさせる声の魅力が増田いずみの持ち味です。
国立音楽大学大学院オペラ科を修了した後、文化庁オペラ在外研究員に選ばれ、3年間ニューヨークのジュリアード音楽院で声楽を学んだ経歴も素晴らしいのですが、そのキャリアを生かしながらも、オペラティックな発声ではない歌唱が耳に心地よく響きます。
ベルカント唱法は広い舞台から声を客席の隅々まで届けるのには適していますが、一人静かに部屋で聴くには疲れます。ポップオペラ・ディーヴァと称される発声はリスナーにくつろぎと癒しをもたらすからこそ多くの支持があるのでしょう。
ミュージカル出演やテレビドラマの主題歌などの活躍など、幅広いジャンルへの挑戦ぶりがうかがえ、彼女にとって第3作となる本CDでもその華麗で伸びやかな美声を披露しています。
ショパンの「夜想曲」は、平原綾香よりも早くこの曲を取り上げ、美しい英語の発声で切々と歌い上げており、お気に入りの1曲です。
「ハルとナツ」〜メインテーマのヴォーカリーゼの透明感と天上への広がり、開放感は格別です。
「越天楽」は、雅楽と現代歌曲の融合を目指した意欲的なアプローチとして受け取りました。意外な取り合わせですが、ヴィヴラートの少ない歌唱法とよく合っています。
スティールパンの伴奏をフューチャーした「オー・ソレ・ミオ」は、従来の声を張り上げる歌唱とは真逆の囁くような発声でひかれます。
プッチーニの「お聞きください王子様」では、数多くのオペラの舞台に立ってきた彼女のキャリアが見事に伝わってきます。この幅広さが魅力です。