著者の前作である「哀しみキメラ」に感動して、今作も期待して読ませてもらいました。
なにやら思わせぶりな冒頭に、これは後でどういう風にストーリーに繋がるんだろうと
ワクワクしながら読みました。
今回は高校生の男女5人が主役で、「僕」の一人称。
一応ホラー調のストーリーではありますが、「哀しみキメラ」とはかなり趣が異なり
交わされる会話も、ただよう空気もなんだか平和です。
しかし前作と変わることのない丁寧で平易な描写で、冷たく乾いているような
でもけして無味乾燥ではない、ほどよい緊張感を常に感じさせてくれる文体が
最初から最後までとても心地よかったです。
登場人物も好感が持てて、最後まで読み終わったとき、「面白かった」というより
この作品が「好きだ」という感想を抱きました。
ところで、表紙をめくると出てくるカラー口絵にはぎょっとさせられました。
初見の段階では単純に「怖っ!」と思ったのですが、読み進めていくうちに
「ああ、あの絵はそういう意味だったんだ。なるほど」と納得することができて
ちょっとした感動を覚えることができました。
イラストレーターの方はこの作品をよく理解しているなあと嬉しくなりました。
ただ欲を言えば藍子の髪の色は本文通り黒にしてほしかったかな、とは思いました。
でもキャラクターたちはほぼイメージ通りに描かれていたので満足です。
これはこれで完結した話なので続編はあまり期待できない雰囲気なのですが、また如月たちが
表紙を飾る本が出たらいいなあと思います。
これでお別れなのは少し名残惜しい感じなので。