指揮者の金聖響氏が評論家の玉木正之氏と交響曲について語り合い、解説するシリーズ(?)の2作目。19世紀ロマン派を代表するシューベルト、ベルリオーズ、メンデルスゾーン、シューマン、ブラームス、チャイコフスキーの六名の交響曲を取り上げている。
前著の『ベートーヴェンの交響曲』がベートーヴェン一人の一曲一曲に多くの紙数を費やして解説していたのに比べると、取りあげた作曲家の数が多いだけにどうしても個々の曲の解説の分量や踏み込みが今一歩なのは否めないが、前著と同じく、指揮者ならではの視点からの指摘はなかなかに興味深い。
金氏がちょうどオーケストラ・アンサンブル金沢とブラームスの交響曲全集を録音したばかりだったせいもあってか、ブラームスの部分が最も充実しており、思い入れも感じられた。3Bの一人として揺るぎない位置を保ちながらも「暗い」「退屈」などと敬遠されることも多いブラームスではあるが、金氏はブラームスの楽曲の考え抜かれた構成の美しさや一見古風な外観のもとでの新しさなどについて熱をこめて語っており、この作曲家への深い敬愛の念が窺える。
ただ面白かったのが、それにも関わらず、金氏が玉木氏との対談部分で、ブラームスが何を言いたくてこれらの交響曲を作曲したのかわからない、との本音を思わず漏らしていることで、ここにはブラームスの芸術の本質的な部分が期せずして表れている気がした。
この本を読んで、「未完成」や「グレイト」以外のシューベルトの交響曲、メンデルスゾーンの「イタリア」「スコットランド」以外の交響曲、チャイコフスキーの第1〜3番など、日頃あまり聴かない曲もあらためて聴いてみたい気にさせられた。