ロマンス小説の翻訳に追われているヒロインと、突然「今日、会社を辞めてきた」と彼女に何の相談もなく一方的に切り出してきた青年の1週間の物語。本書で特筆すべきなのは、小説内小説であるロマンス小説が翻訳を飛び越えて、彼女自身が物語のつづきを書き進めてしまうところにある。その物語には現実世界における青年との些細な齟齬や誤解から生じる彼女の揺れる思いが色濃く反映される。ロマンス小説の中盤でヒーローの騎士にとんでもない出来事が起こる辺りから、本来の予定調和の世界から逸脱していく。主人公の姫はどうなってしまうのか・・・現実のふたりの関係と共に見逃せなくなるのがミソ。変化球の切れ味抜群の恋愛小説である。ヒロインの父親もいい味だしてます。