エルトンほどの長いキャリアと充実した多彩な音楽性をもつアーティスについて、90分程度でまとめよ、というほうが無理な話だ。それゆえに、本作は、その制作フレーム自体、厳しいものといわざるを得ない。
当然中身も、工夫はしているが、特にエルトン初心者にとっては、分かったような分からないような、で終わってしまうだろう。
数曲、一昨年あたりにコンサート映像で完奏される曲を見られるのがせめてもの救いだが、あとは、ファンとなるには必ず押さえるべき70年代の快進撃については、全く表層的にしか捉える事が出来ていない。
むしろ、キャリアとして円熟を迎えた90年代以降について、なぜか丹念に追っているフシがあり、これだと、エルトンを「ライオン・キング」や「アイーダ」、あるいはダイアナ妃との関係、ゲイであること、といった妙な側面からの入り口しか見るものに見せないような気がする。
やはり、彼の音楽性の本質的な特質(トーピンとのコンビによる、詩ありき、で曲を後付けする点、英国本流の音楽性を軸としつつ、北米的なアプローチを奔放に取り入れる自由さ、パフォーマーとしての実力、等)などをもっと押さえてしかるべきだ、といった不満ばかり残ってしまった。
今、この時期に発表される唐突さもあるし、「大人のロック」的な上っつらだけの作品が垂れ流される事態になっているとしたら、少々複雑な気分だ。個人的には、過去にLD化された「トゥー・ルームス」といった映像作品の復刻を希望したい。