『ロックン・ロール・サーカス』は見所が多い作品である。
ピート・タウンゼントがインタビューの最後で、「この映像は30年後に見ても楽しいはずだ」と言った。
確かに楽しい映像作品だ。
TV番組用に企画され、豪華なゲストが出演しているというだけでなく、トミーでブレイクする寸前のザ・フーの白熱の演奏。
一晩だけの贅沢な幻のバンド、ザ・ダーティー・マックの焦げ付くようなブルース。
ザ・ダーティー・マックは、ボーカル&ギターがジョン・レノン、リード・ギターはエリック・クラプトン、ドラムはミッチ・ミッチェル、そして、ベースはキース・リチャーズというメンバーである。
ジョンのボーカルが素晴らしく、「ブルースもいけるやん!」と思わず唸ってしまう。
貫禄を感じさせる、タジ・マハールには、ノックアウトされた。
可憐なマリアンヌ・フェイスフルには、うっとりしてしまう。
ジェスロ・タルのステージでは、トミー・アイオミがギターを弾いている。
こんなに、出演者が豪勢でバラエティであっても、ザ・ローリング・ストーンズの『ロックン・ロール・サーカス』としてまとまりがあり、散漫な感じは一切無い。
ザ・ローリング・ストーンズの演奏は、ちょっとスローな「Jumpin' Jack Flash」から始まり、当時のニューアルバムである『Beggars Banquet』から多く演奏されている。
圧巻なのは「Sympathy For The Devil(悪魔を憐れむ歌)」で、ジョン・レノンは踊り狂っている。
エンディングの「Salt Of The Earth(地の塩)」では、充足感がいっぱいである。
『ロックン・ロール・サーカス』はザ・ローリング・ストーンズというバンドの歴史上で、とても貴重な作品である。
その理由は、バンドの主導権がブライアン・ジョーンズからミック・ジャガーに移ったと、はっきり実感させられるからである。
実際に、この後にブライアン・ジョーンズは、ミックとキースにバンドから追い出される。
ピート・タウンゼントのインタビューで、「ブライアンは、ずっとステージの横で泣いていた。キースは見て見ぬふりだった」という。
心が痛むエピソードであるが、避けられない道だったのは事実であり、良否は別として、その事実は受け入れないわけにはいかない。
確かに、全体的にブライアンの表情は暗く見えるが、エンディングの「Salt Of The Earth(地の塩)」での笑顔は何なんだろう?
ピートのコメントは、作られたものなのかとも思える。
『ロックン・ロール・サーカス』は、いろいろな思いを含んで楽しめる作品である。