1967年生まれの社会学者が2001年に刊行した本。その目的は、何らかのライフスタイルを表すものと考えられつつも、その定義が一致したことがいまだかつて無い、錯綜したロック・イメージを、社会学の手法(ブルデューなど)を用いて整理することにある。まずロックの本質を示す指標として、「アウトサイド」(価値観の転倒)指標、「アート」(純粋趣味)指標、「エンターテインメント」(大衆性)指標が挙げられるが、この3指標はときに相互に大きく矛盾する。1970年代、対抗文化の解体を受けて、従来は偶然に結び付いていたこの3指標がそれぞれ分化と洗練化の様相を見せる(日本では、英米の「本場のロック」とのギャップを過度に意識して否定形の自己規定しかもてなかったロックと、反体制・自主独立を掲げるフォークとが対立し、最初から上記の3指標が分化してそれぞれ蛸壺化した)。まず反体制性(アウトサイド)を強調するパンク・ロックが、多様な「周縁性」を開拓しつつ、ロックの本道と見なされる。次いで、パンクを前衛芸術運動(アート)と見なすニューウェイヴが「ロック自体の否定」を始める。この過程で、ロックとブルーカラー文化(アウトサイドの一種)との乖離が進行する。1980年代、消費社会化の進展と共に、一方でロックの死が論じられつつ、他方でロックのポップ化(エンターテインメント)が進行し、メジャー・シーンのロック・ポップ(ニューロマンティクスなど)とマイナー・シーンのロック(ハードコア、ノイズなど)に二極化する。こうした中で、レゲエ、ワールド・ミュージック、ハウス、テクノ、ラップ(ヒップホップ)が登場し、競合することになる。ロックを学術的に扱った本として、読み応えがあり、かつ読みやすい。後半部分では、日本の戦後音楽史をロックを中心に(洋楽の土着化の歴史として)10年ごとにたどっており、「J回帰」論を考える上でも興味深い。